2017.08
一般社団法人 日本インタラクティブ広告協会
技術委員会
近年、広告費を欺瞞的に詐取することを目的とした不正なサイトやページが存在することが明らかになりつつあります。その運営主体として、小遣い稼ぎ目的の一個人から、反社会的勢力との関連が疑われるような国内外の悪質事業者まで、様々なプレイヤーの介在が疑われています。
私たちは、このような不正な広告費詐取の手法を「アドフラウド」と定め、アドフラウドのインターネット広告業界からの排除を進めることで、不正な個人や悪質な事業者への広告費の流出を防ぎ、市場の健全性を維持することが重要だと認識しました。
一方、正常な広告配信においても、必ずしも有効とは言えないトラフィックが混在していることがあります。これらについては無効なトラフィック(IVT)として、広告レポートから排除することを目指しています。これは、広告レポートの正確性と有効性を高めることで、さらなる市場の発展を促進するためです。
現在、社会一般においては、アドフラウドと無効なトラフィック(IVT)が同一視される傾向にあり、海外でも明確に区分されていない状況ですが、少なくとも私たちは、この両者への対策は、目的も対象範囲も大きく異なることから、これらを区別して考えることとします。
なお、「アドフラウド」は、広告主の予算を詐取するだけではなく、本来、正当な媒体社に費やされるべき広告費を、直接的あるいは間接的に、不当に横取りする行為であることも、改めて認識すべきであると考えます。
私たちが現在、「アドフラウド」の類型とみなしているものを別紙に記載します。
「アドフラウド」には、様々な手法が用いられますが、最終的には広告費の詐取が目的である以上、必然的に不正なサイトやページに行き着くものと考えられます。
よって、対策として最も有効な手段は、不正なサイトやページへの広告配信を極力抑制することであり、そのような不正なサイトやページの運営者との広告取引を停止することであると考えられます。
すでに、私たちの会員事業社においては、個々に最大限の対策がとられています。
しかし、このような配信の抑制や取引の停止を、より実効性の高いものとしていくためには、私たちは改めて、業界を挙げて具体的な方策について議論をすることが必要であると考えました。
業界の健全性を保ち、会員各社が持続的成長を遂げるために、「アドフラウド」対策を推し進める必要があると考えます。
参考
JIAA「インターネット広告基礎用語集」2017年度版より抜粋
- アドフラウド(Ad Fraud)
- 自動化プログラム(Bot)を利用したり、スパムコンテンツを大量に生成したりすることで、インプレッションやクリックを稼ぎ、不正に広告収入を得る悪質な手法。
- IVT(アイブイティー)
- Invalid Trafficの略。無効なトラフィックのこと。検索エンジンのクローラーのようなプログラムによる悪意のないトラフィックと、作為的にインプレッションやクリックを発生させる悪意のある不正なトラフィックがある。前者は、自ら人ではないことを示しているため除外することが容易である。後者は、人によるトラフィックであるかのように偽装しているものなど、様々な種類がある。不正に広告収入を得ることを目的としたアドフラウド(Ad Fraud)によって生じるトラフィックも含まれる。IVTのうち、機械的に生成される人以外によるトラフィックをノンヒューマントラフィック(Non-Human Traffic、NHT)という。
別紙
アドフラウドの類型
- Ad Density(過度な広告領域)
- 検索スパムと組み合わせて、広告しかないページに誘導して広告アクセス増を図るもの。
- Ad Injection(不正な広告挿入)
- ユーザーが閲覧している正当な媒体ページの広告タグを、不正事業者(不正アドネットワークなど)が自社広告タグにすり換えることで、不正な収益を得るもの。
- Auto Refresh(過度に自動リロードされる広告)
- 高頻度で自動リロードを繰り返し、ごく短時間に大量の広告を表示させたりするもの。
- Cookie Stuffing(不正な成果の獲得のためのクッキー汚染)
- ユーザーブラウザにプレミアムメディアやブランド広告主のページをポップアップで表示させることで、ユーザーブラウザに優良な閲覧履歴のクッキーを生成させる手法。
- Falsely Represented(オークションのURL偽装)
- アダルトコンテンツや違法ダウンロードの事業者が、広告オークションに対して、正当なサイトの URL を偽装して、広告の入札を受けようとする手法。
- Hidden Ads(隠し広告)
- ブログパーツの見えない領域に広告を仕込んだり、CSS等でユーザーに見えない形で広告を配信したりすることで、広告配信数を水増しするもの。
- Imp/Click Bot, Retargeting Fraud(プログラムされたブラウザによる広告閲覧)
- ブラウザをプログラミングして、自動的にimp、クリックを発生させる手法。
- Malware, Adware, Hijacked Device(支配権を奪われた個人端末からの広告リクエスト)
- ユーザーデバイスを不正プログラムに感染させ、自社サイトの広告を閲覧させたり、クリックさせたりするもの。
- Sourced Traffic(By Traffic Exchange、トラフィックエクスチェンジ)
- ユーザーにページ内の自動リロードのコンテンツを閲覧させ、コンテンツ元にトラフィックを渡して対価を得るもの。
以上